樋口 竜大

8月18日(水) 大阪編

ゼミ合宿開始。6時過ぎに西梅田駅に着くが、バス酔いで気分は最悪。
とりあえず旅館のある日本橋に向かう。ホテルの位置を確認してホテルの脇にある難波の街へ。
難波は歌舞伎町のような繁華街で、仕事帰りのホストやホステスが闊歩していた。
ゲロ臭く、小便臭い難波の町。朝っぱらから男と女がつかみ合いの喧嘩をしていた。
そんな危険な町をバス酔いのゲロゲロな状態で一時間以上もぶらつく。
そのあとはみんなと合流してホテルの応接間で時間を潰す。
全員揃ってから、大阪で有名なたこ焼きを食べに行く。たこがデカくてプリプリしていた。


〈国立国際博物館「束芋」・「横尾忠則」〉

〈束芋編〉
断面を扱った展覧会。それも普通の展覧会のようにただ壁に展示物があり、
それを歩きながら見るのではなく、天井などにスライドで映像が映されている。
なので床に寝っころがって天井に映し出された展示が見られるようにクッションのようなものがあった。
私がこの展覧会で一番気に入ったのは「悪人」という新聞小説「悪人」の挿絵として使われた挿絵の原画を展示したものだが、
人間と体と鞄や救急車などいろんな物が融合したこの挿絵はグロテスクでエロチックであり、
百鬼夜行のごとく和紙にズラズラと書かれたその挿絵たちは見る者を不安を与える印象があるが、
それでも目が離せなかった。


〈横尾忠則〉
一生にあんなにポスターを描けるのは純粋にすごいと思った。
途中途中の説明文を読んでみると横尾はしょっちゅう色々な物に影響を受けたと書いてあった。
そのお陰でアイディアが枯渇することなく、あんなに大量のポスターを生み出すことが出来たのだろう。


〈新世界フィールドワーク〉
通天閣の足元にて一時解散。最初は1人で散策をするも1人で串かつ食うのはさすがに馬鹿馬鹿しいと思い、
男子メンバーと合流して串カツを食べる。その後、男子は蜘蛛の子を散らすように四方八方に散らばり、
フィールドワークを開始した。初めは四天王動物園やその周りをブラつき、また新世界に戻る。
新世界は完全に名前負けした町(世界)で、町には汚い立ち飲み屋、国際劇場(映画のポスターが絵)、
歌舞伎の小屋、軒下や車の下に集う猫など、どこにも「新」の部分は見当たらない下町だ。
こんな下町テイストが残された町は滅多に見ない。たしかにある意味、新世界だ。

〈通天閣編〉
最後にみんなで通天閣に上るが、通天閣はたいして高くない。
展望台にはベタに望遠鏡があったりビリケン像があったりした。
しかし一番面白かったのは展望室から一段下がった下の階。部屋にはグルッと椅子が配置されており、
それぞれに「良縁」、「両思い」、「健康」などが背もたれ書かれていて、
その椅子に座ると願いが叶うというモノがあった。その中で「両思い」と書かれた椅子があり、
その椅子の下には新世界の町並みが広がっているのだが、
ちょうど新世界の椅子の真向かいの部分にラブホテルがあった。
ランドマークタワーやスカイツリーではとてもまねできないような、ハイセンスだ。


8月19日(木)京都編

〈京都国際マンガミュージアム編〉
京都国際マンガミュージアムでは「フィギュアの系譜」というフィギュアの歴史展を開催していた。
小さいころはエイリアンやアメコミのフィギュアにはまり、それからガンプラ、
今でもルパンのフィギュアを玄関に飾っている私としては、この「フィギュアの系譜」は今回の合宿の目玉の一つだった。
予想通り、「フィギュアの系譜」は非常に面白く、昔の土偶から現代のフィギュアに至るまでの流れが説明されているのだが、
それが非常に論理的で目からウロコがバラバラと落ちた。
そして展覧会で「大供の誕生」と書かれたパネルに、私は非常に興味を引かれた。
あまりにも面白かったので、そのパネルに書かれていた文章の一部ノートに写したので、ここに記す。

〈大供の誕生〉
明治になると近代化や都市化に対する反動から伝統的な製法で作られた「郷土玩具」を収集する人々が現れる。
彼らは「大人になっても玩具で遊んでいる大きな子供」という意味で自らを「大供」と称する
               京都国際マンガミュージアム「フィギュアの系譜」より

つまり「大供」とは、開国だ文明開化だと日本が変わりつつあるなかで、刀を手に取り武力で訴えるのではなく、
「郷土玩具」を集めるという行為でこれらの変革に対して反対の意を表明したのだ。なんという大馬鹿者達であろうか。
しかし、私にとってそんな前代未聞の手段をとって世の流れに逆らった「大供」達が、そのヘンテコぶりが面白く、
どこか羨ましくもあった。その他、イラストレーターの村田連爾の展覧会などもあり、
非常に充実した時間をすごすことが出来た。

〈京都国立近代美術館「存在のエシックス」編〉
地下鉄を乗り継いで今度は京都国立近代美術館へ。京都国立近代美術館に行くまでの道のりも、
西日で非常に熱かったが、道の下に涼しげな小川が流れていたり、趣のある建物が立っていたりして、道中楽しめた。
さて、「存在のエシックス」だが生命、医療、環境、宇宙に芸術的なアプローチをしたモノを展示しているそうだが、
正直、難しすぎてわからなかった。むしろ美術館の前でやっていた、
水を地面に撒いてその水溜りに鳥居を出現させる水遊びのほうが、シンプルで分かりやすかった。
「存在のエシックス」の展示品も何かしら意味があったり、研究成果を述べているのだろうけれども、
フィギュアの系譜で「大供カッコイイ!」などと言っている私には理解が難しかった。
しかし、その作品の多くが体験型の作品だったの、理解は出来なかったが楽しむことは出来た。


〈四条河原町〉
ゼミ旅行の前に私は8月の初めに京都に行っているので、今年2度目の京都で2度目の河原町。
前回行ったときに食べられなかった錦市場にある「まるき」の親子丼を食べるためにすぐに錦市場へ向かう。
しかし、迷って探している間にまさかの閉店。結局、また親子丼を食べ損ねた。大阪はたこ焼きとか串カツ、
神戸は神戸牛など色々と食べるものはあるが、京都はなかなか思い浮かばない。
そして京都っぽい食べ物となるとかなり値が張る。
そしてこの四条河原町というのは若者の町みたいな感じでファーストフード店やチェーン店が多い。
親子丼が食べられず、かといってここまで来てファーストキッチンで手を打つこともできない。
そこで、ここは関東と関西のそばを比べてみよう!と思い蕎麦屋へ。
関西の蕎麦は関東より薄味だと言われているが、僕には関西のそばの方が関東よりもダシの甘味が強いように感じた。
一応確認のためにレジのおねぇさん(はんなり美人)に関東と関西のそばの違いを聞いたら、
やっぱり関西は関東よりも薄味なんだそうだ。自分の舌に自信をなくす。
その後は錦市場や近くの商店街をグルグルと巡った。2回目なのでどこになにがあるのあかはだいたい分かる。
ポテポテと市場を歩いていたとき、目の前から女子高生数人が歩いてきたのだが、
急にみんな揃って僕のほうを見て手を振り黄色い声をあげた。京都にてモテ開眼!?
思わず右手がピクリと動いたのだが、後ろを振り向くとテレビの撮影をしていて、
「しるしるみちる」という番組の名物ADあっくん(このときは「しるしるみちる」もあっくんも知らなかった)がいた。
なんだ、彼がキャーキャー言われていたのか・・・。
手を振り返さなくて良かった。
一通り商店街をぶらつき夜も更けてきたところで鴨川へ向かう。
噂どおりカップルが所狭しと川べりに座っているが、確かに景色としてはとても綺麗だし風も心地よい。
気持ちのい場所だった。タバコを吸ってコーヒーを飲んで、
川べりにいた猫をからかっていたら川に落ちそうになったので帰る。


8月20日(金)神戸編
〈宝塚市立手塚虫記念館〉
かなり電車を乗り継いで初めての神戸へ。宝塚のあたりは電車の沿線沿いをお金持ち向けのおしゃれな町に作ってあるので、
景観などが綺麗で歩いて気持ちの良い町だった。
手塚治虫記念館だが、一階には手塚治虫の生い立ちが説明されており、2回にはジャングル大帝レオの展覧会をやっていた。
そのなかでも特に私が注目したのは一階の一番奥にあった石ノ森章太郎や藤子F不二雄、
その他手塚治虫に感銘を受けた漫画家たちが手塚治虫に関するインタビューを流していたテレビだった。
「漫画の神様」と呼ばれているだけあり、みな一様に、どれだけ手塚治虫がすごいかを物語っていた。
宮本ゼミに入ってから数多くの写真展や展覧会、記念館などに行くようになり、
色々な人の色々な作品を見るようになって素直に思うのが「羨ましいなぁ」と言うことだ。
手塚治虫もポスター展の横尾忠則も、色々な苦労や努力はあった結果だが、最終的には自分のしたいことをして、
お金を稼ぎ成功している。就活を目前に控え、文章で成功したいと願っている私としては、そんな彼らがとても羨ましく、
特に手塚治虫記念館の一階のテレビで語られていた手塚治虫の凄さには、とても感銘と刺激を受けた。

〈神戸ファッション美術館 「世界の衣装たち」〉
UFOを思わせるような大きな建物で行われている「世界衣装たち」の見学。
建物が大きい割りに中は人が少なかったので、ゆったりと見ることが出来だのが嬉しい。
所狭しと並ぶ世界各国の民族衣装は、その国の生活様式に沿って作られているため形や色も様々で、見ていて飽きが来なかった。
国際日本学部にはファッショに関する授業があるが、そのテの授業を1つもとっていない私としては、
ファッション展は斬新で面白いモノだったが、大学の授業でファッションの授業を受けていたならば、
もっと面白かったのではと軽い後悔もした。
また美術館というのはその施設に併設して図書館がある場合が多く、この神戸ファッショ美術館にも図書館があり、
展覧会を見終わった後は図書館で時間を過ごした。
美術館というのはそこでやっている展覧会も面白いが、併設している図書館や建物自体の形が変わったものが多いので、面白い。


〈三宮〉
まずは阪急線の高架下にある小さな商店街を歩き、そのあと大通りがある町に出る。
フィールドワークにおいて私が一番重視しているのは、その日の晩御飯である。せっかく神戸に来たのだから、
どこにでもある物なんか食べてたまるか!という意気込みのもとに、初めての三宮の町を気の向くままに歩き回る。
その途中に奇妙な建物を発見。



その後も、美味しそうなお店を探して商店街、裏路地を右往左往した結果センタープラザの地下街レストランに腰を落ち着ける。
まるで新橋駅前の新橋ビルのB1に広がるレストラン街のように、人通りが少なく、どこか寂れた様な雰囲気の漂う空間が広がっていた。
蕎麦屋、中華料理屋、鍋屋、居酒屋、飲食店がたくさんあるのだが、
どれも営業しているのかしていないか分からないようなお店ばかりだった。そして、その中でみつけたのがこの喫茶店。


名前からして絶対、世捨て人のような人々の吹き溜まりだと思い、店の前で怖くなって長考すること10分、意を決して扉を開けた。
しかしちっともそんなことはなく、店内は以外に広くて80年代パンクが流れていた。ホッとしたのもつかの間、
私の様な東京モンに対してはどこか冷たく、「すいません!」と何回も言っても店員さんに案内されずカウンターに座っていた常連さんに笑われた。
「どん底」で一息ついてからまた地下街を回った結果、最終的には焼き鳥屋さんというチョイスになってしまった。
まるで、新橋のサラリーマンのようである。


8月21日(土)大阪編
〈上方演芸資料館〉
ゼミ合宿最終日。あっという間の4日間だった。宿の近くにある上方演芸資料館を見学。
資料館や、その周りの町もこれぞ大阪、という感じのコッテリとした大阪感が漂っていた。
資料館の中は小さな町のような作りになっていて、漫才の歴史やカツラやハリセンなどの漫才グッズなどが展示されていた。
そのなかでも一番興味深かったのが、資料館内の資料室のテレビで見ることの出来る、過去の新喜劇の映像だった。
そこには今は漫才をせずマラソンをしている間寛平が漫才をしている姿が映っていた。
私達の世代では間寛平が漫才をしている姿を見ることチャンスはあまりなく、
彼の「かい〜の」というギャグも「そういうものがあるらしい」というどこか歴史上の物のような感覚だったが、
上方演芸資料館で初めて間寛平が漫才をしている姿を見た。そして、ものすごく面白く、今のお笑いには無い何かを感じた。

〈その後 そしてまとめ〉
その後はみんなで大阪で有名なお好み焼きやで昼ごはんを食べてから解散になった。
あっという間の4日間であり、また、もし自分が個人的に関西に旅行に行ったならば多分、行かないであるとこを大分回った。
自分で行くよりも、ゼミの合宿で行った方が新たな発見などが多く、興味の幅が広がり知識の量も増えた。と思う。
この夏合宿は私の中で大学生活の思い出の1つとして、大きく残るだろう。
この場を借りて、引率してくださった宮本先生にお礼を言います。

ありがとうございました。

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