須賀 智子

 

8/18 1日目

・国立国際美術館「束芋―断面の世代」展

・通天閣・新世界フィールドワーク

 

<「束芋―断面の世代」展>

 「断面の世代」は、束芋自身をはじめ、団塊の世代の子供たちをさした言葉である。また、この個展でしばしば舞台となっている「団地」は、多くの「団塊の世代」が子供を産み育ててきた場所だという。この展示では、団地を描いた作品に加え、小説「悪人」のストーリーを絵のみで表現したものや、人体をさまざまな視点から描いた作品などもみることができた。束芋の作品はアニメーション映像のものが多いが、それをただ単純なスクリーンに映すのではなく、天井であったり、婉曲したスクリーンであったり、筒状のものの中であったりと、作品を映し出す場所にも個性的な工夫がみられた。また、そういった変化に富むスクリーンを使って映し出される作品は、どの立ち位置から見るかによって全く異なる印象を受けた。例えば、天井をスクリーンとしていた「団地層」という作品は、切り取られた団地の部屋から家具が落ちているというものだった。ここでは、立ち位置によって、家具が落ちてくるように見えたり、落ちていくように見えたりと変化があった。

 

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<通天閣・新世界フィールドワーク>

私は数年前に大阪に観光で訪れ、通天閣に来たことがあ

った。そのときは昼間であったため、景色もいまいちで

町全体も閑散とした印象しか受けなかった。しかし、今

回は夜ということもあり展望台からの夜景は美しく、通

天閣室内もあやしいライトアップがなされていて前回と

はまったく違った印象をうけた。また、夕食の時間帯で

もあったため繁華街もにぎわっていた。通天閣周辺の飲

食店でなんと言っても多いのは串カツ屋で、通天閣で配

られていたパンフレット紹介されているだけでも28店も

ある。「安い、うまい」だけでなく、客を獲得するために

それぞれの店が独自のサービスや特色を出しているよう

だった。呼び込み作業なども、多く見られた。

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通天閣から少し歩いた所に、「スパワールド」という人工温泉とプールのテーマパークがあった。気になって中に入ってみると、かなり混んでいる様子だった。後から調べてみると、通常は3時間2400円のところ、1000円で利用できるキャンペーン中であったようで、そのために混雑していたようだ。人でにぎわっているにもかかわらず、入り口脇のエレベーターが動いておらずゴミため場になっていたり、自転車が乱雑に駐輪してあったりと、栄えているのかいないのかわからない雰囲気であった。また、スパワールドの脇に「大阪国技館跡」というものがあったのだが、ただ自転車が置かれている空き地にしか

見えなかった。

 

 

8/19 2日目

・京都国際マンガミュージアム

・京都国立近代美術館「生存のエシックス」展

・四条河原町周辺フィールドワーク

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<京都国際マンガミュージアム>

 このミュージアムは1995年に廃校となった元龍池小学校の校舎を改装して建てられた。そのため、館内は教室や廊下、ホールといった小学校舎を利用工夫した展示法で、趣を感じた。館内には、日本をはじめ世界各国のマンガ本や雑誌が展示され、閲覧可能となっている。年間パスポートなども発行されていて、マンガ喫茶のような感覚で利用している人も多いようだった。日本のマンガに紹介されているエリアでは、年齢や性別別に発展してきようす、日本マンガ特有の学習資料としての役割、マンガが出来上がるまでの過程やアニメーションへの編集、マンガ業界の実態やコンテンツ産業への発展、世界各国のマンガと比較しての日本マンガの特徴などを見ることができた。

 特別展では「フィギュアの系譜―土偶から海洋堂まで」展が行われていた。そこでは、展名のとおり、土偶などごく単純な人形的ものから現在の緻密で精巧なフィギュアに変遷していく様子が見られる。日本のフィギュアは、マンガやアニメ、ゲームなどのキャラクターをモデルにしている場合が多い。そのため、マンガやアニメのキャラクター特有のデフォルメを取り入れることは難しく、それを実現しているフィギュア師の技術は非常に高いものだという。個人的に興味を持ったことは、江戸時代などで人形を好んで集めているいとは「大供」と呼ばれていたらしい。これは「いい大人のくせに子供っぽいことをする」という意味で揶揄がこめられた言葉である。現代でも、フィギュアを集めている人々は、世間的にあまり良い印象を持たれることは少なく、いわゆる「オタク」と呼ばれている。江戸時代において、「オタク」にあたる言葉が、「大供」であったのかもしれないと考えた。

 ミュージアム内では、イラストレーターの村田蓮爾の企画展も行われていた。私自身、彼がキャラクターデザインしたアニメ等を見たことはあったが、彼の描いた作品そのものを見るのはこれが初めてであった。たった一枚の絵からも、それが生み出す世界観やキャラクターの人物像などが感じられ、これが村田蓮爾が世界中にファンを持つ所以なのだろうと思った。

 

<「生存のエシックス」展>

この展示会は、生命、環境、宇宙などの科学的テーマと芸術との融合をはかるものであった。館内では、キクイムシが活動する音をリズムや音楽としてとらえる展示、遺伝子組み換え食品を被写体とした写真集、家事ロボットが主となっている茶室、国際宇宙ステーション「きぼう」の内で育った植物などを見ることができた。通常の展示では、対象物を見ることしかできない場合が多いが、この展示会では、聞く、触る、嗅ぐなど、鑑賞者が実際に何かを体験できる形になっていた。

個人的に興味を持ったのは、「盲目のクライマー/ライナスの散歩」という展示である。展示説明によると、これは三角形をポリゴン状に連結していくことで形作られた、床面、壁面、天井面などの区別を持たないさまざまな傾斜の起伏からなる多面体フィールドであるらしい。この多面フィールドに上り、自分が居心地の良い場所を見つけるというものであった。実際に上ってみると、さまざまな傾斜に加え、点いたり消えたりする照明の影響で平衡感覚を失った。さまざまに変化していく環境の中でバランス感覚を失い、逆にそれを取り戻していこうとする過程は興味深い体験であった。また、この展示会には多くの外国人も見られたのだが、こういった「実際に体験してみよう」というような企画では、彼らが周りの日本人たちよりも、格段にいきいきしている様子も興味深かった。

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<四条河原フィールドワーク>

四条河原周辺は、なんといっても栄えた街だった。

大規模なショッピングモールや大手のデパートも数件

あり、かなりの賑わいをみせていた。しかし、一本裏

通りに入れば趣のある店路も多く、現代的な面と歴史

的な面、二つをあわせもつ街だと感じた。

 

 

 

 

8/20 3日目

・宝塚記念手塚治虫記念館

・宝塚劇場内ミュージアム

・神戸ファッション美術館「世界の衣装たち」展

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<宝塚記念手塚治虫記念館>

 手塚治虫が宝塚市の出身ということで建設された記念館であった。「火の鳥」像をはじめ、館内は手塚治虫が描いたキャラクターが取り入れられたデザインとなっていた。一階部分は手塚治虫の人物像、彼の生み出した作品やその変遷などについて紹介されていた。学校での成績はかなり優秀だったようで、自ら虫の写生図鑑を制作するなど、子供時代から絵の才能を発揮していたようだ。二階部分では「ジャングル大帝レオ」の企画展を行っていた。今秋に「フジテレビ開局50周年」と「手塚治虫生誕80周年」を記念して、リメイクされた「ジャングル大帝レオ」が放送されるということで、それに伴っての企画展であったようだ。パネルを追って作品のストーリーが紹介されて

 

 
いて、一部アニメ化された映像も流れていた。地下には「アニメ工房」というスペースが設けられ、実際にマンガを描いてみる体験教室が行われていた。やはり手塚治虫の作品ということで、展示物は貴重なものらしく、京都のマンガミュージアムのように実際展示物を手にとって見るということはできなかった。

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<宝塚劇場内ミュージアム>

 劇場内にひっそりとあるミュージアムだったが、地元ファンの人々も訪れていて賑わっていた。ミュージアム内には、歴代スターの写真、いままで公演された作品のポスター、実際に使用された衣装や小物などが展示されていた。興味深かったのは、展示写真や販売されているグッズが男役のスターのものばかりだということである。以前、テレビで宝塚音楽学校を目指す少女達に密着した番組を見たことがある。そこでは、宝塚を目指す少女は女役を希望する人が多く、倍率も高いようだった。写真やグッズが出ている女役スターは、厳しいライバル競争に勝ち、男役にひけをとらないファンを獲得するために、なみなみならぬ才能や努力をしてきたのだろうと感じた。

<神戸ファッション美術館>

 この美術館では、服の構造、色彩、素材、変遷などをテーマに、多種多様なファッションの形が展示されていた。また、特別展示として「世界の衣装」展と「アンティーク・レースの至宝」展も行われていて、世界各国の民族衣装や中近世のレース細工などもみることができた。印象に残っているのは、やはりファッションは時代背景や思想を反映しているということだ。例えば、豪奢なフランス人貴族たちの衣装も、フランス革命後にはかなりシンプルなものへと流行の変化が見られた。また、王朝や文明によって好まれる色も違い、例えば中国王朝では黄色は僖色とされ、よって中国の衣装には黄色が多く取り入れられる。一方、ヨーロッパでは黄色は良くない色らしく、衣装に使われることも少なかったようだ。

 

8/21 四日目

・上方演芸資料館(ワッハ上方)見学

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<上方演芸資料館>

この資料館は、落語、漫才、講談、喜劇などの上方演芸に関する資料を保存・展示しているものだった。普通の資料館のように文献や写真が展示してあるだけでなく、変装して写真撮影ができる「お笑い写真館」、人気の演芸番組が見られる「居酒屋こいさん」、自分がどんな芸人になるかを診断できる「街角占い師」などユニークな展示スペースや機械もあった。また、こういったバラエティーに富んだ展示方法により、館内装はちょっとしたテーマパークのようになっていて、池袋のナンジャタウンに似ているところがあった。自分が日常生活で「お笑い」に触れる機会がといえば、テレビ番組だけである。そういった番組の内容は、芸人がコントや漫才をしたり、何かの企画を面白おかしく行ったりするものがほとんどである。そのため、私には本場大阪の上方演芸に親しみがなく、館内でライブ映像などを見ても面白いと感じなかった。同じ国内で、且つテレビ番組で活躍している芸人たちの多くが上方演芸をルーツにしているにもかかわらず、地方やちょっとした環境の違いでまったく異なる文化があるのだと再確認した。

 

 

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